2011年7月22日金曜日

魔法の杖

「先生、それなんですか?魔法の杖みたいですね」
先生は話ながら木の棒を削っていた。
私が尋ねると、
先生は微かに笑みを浮かべたように見える。
「ハリーポッターって知ってる?」
その頃は第三作アズカバンの囚人が放映された頃だろうか。
「知ってるもなにも。やっぱりソレですか!!」

MySpaceのコレ
全体)http://jp.myspace.com/taikounojiri/photos/1110549#%7B%22ImageId%22%3A1110549%7D
アップ)http://jp.myspace.com/taikounojiri/photos/1110549#%7B%22ImageId%22%3A1110550%7D

子供のように一層笑みを大きくされ経緯を語っていただけました。

TVで放映されたハリーポッターを見て杖が欲しくなった。
そこで翌朝玩具屋へ行く。さんざん歩いて目当ての杖を見つけた。
「でも本当の玩具なんだよね。僕が欲しいものは本物なんだよ」
「えーと・・・本物って、本物の魔法の杖ですか?」
「そう」
「・・・魔法が使えるような・・・」
「いやいや、そうじゃないよ。本当に魔法が使えるかのような雅な杖だよ。
えらくあの映画に出てくる杖の雰囲気がよくてね。
ないから作ってしまおうと思ってさ」

しばらして訪問すると、杖の原型が出来上がっている。
木型ように見える。その杖を先生は素手で摩っていた。
「なんで手で擦っているんですか?」
「風合いがるんだよ」
「木に塗る油とかじゃ駄目なんですか?」
「駄目じゃないけど、それだと安っぽいんだよね。
本物の風合いはそう簡単には出るもんじゃない。
だからこうして手で擦ることによって手の油分が徐々に染み出し、
自然な風合いになる」

返す返すも凄い先生だと思った。
無いなら作ってしまえ、
しかも、安易につくろうとはしない。
でも師は、「いやいや、それが一番手っ取り早いんだよ」と語る。

杖は映画の杖ともデザインが異なり独特なものとなっていた。
人工と自然と精霊の合作とも表現できようか、
しかもどこか東洋的な土着感を漂わせていると私は感じた。

来るたびに手で触っていた。
来る日も、来る日も。

「先生!杖!!・・・凄い!!まるで本物ですよ」
置かれている杖を見て驚いた。
白い木肌そのものだった杖は、人の手によって重厚な風合いを醸し出している。
「悪く無いでしょ」
「悪くないどころか、凄い本当に魔法の杖だ・・・」
「あと何年かすればもっといい雰囲気になるだろうね」
「え?完成じゃないんですか」
「完成じゃないよ。まだまだ浅いね」
「まだまだかかるんですか」
「これからは毎日擦る必要はないけど、10年もすればいいのが出来るんじゃない?」

本当に魔法が使えそうなその杖の柄は
ドングリの形をしていた。

8/1 机の上に無残にモッキリ折れている魔法の杖を発見。