私は噛み合う人はあった瞬間に何らかの感覚を共有すると思っている。
「噛み合わないー」と思う感覚も、ある種の噛み合いがあってのことだ。でも中には一切何も感じない人もいる。心の交流が一切感じられない。そういう人は大体内向きな人が多い。外に対して心を裂くことがない。全エネルギーを内なる世界に向けて、我が心ここにあらずという感じである。そういう方と喋っていると凄く寂しい気持ちになる。人形を相手に喋っているような感覚だ。
師匠の奥さんほどシンパシーを感じた方は今までの人生でいなかった。親、兄弟、師匠、親友含め圧倒的であった。まるで自分の失われたモノを見つけたかのような驚きであった。全身に電気マッサージ機の電気を流したかのようだった。会った瞬間に「あ!!!」と思うものを感じた。何も喋らなくても、互いに心が丸裸になったようで、ダチョウ倶楽部のリュウちゃんが、お笑いウルトラクイズで意味もなく一瞬で素っ裸になったような感じだ。あまりの丸裸感に対面するだけで「恥ずかしい」と感じてしまうぐらいであった。
ほとんど会話はロクにしなかったが、顔を目を会わせニッコリ笑っただけで全てが把握できるようであった。何もかもが理解できているような、把握されているような感覚が常にまとった。「この方の言うことは全て真実だし、全てその人のためを充分に感じた上での発言だ」と理屈ぬきに把握できた。彼女の一言無しに、今もって尚師匠の下にいることは無かったろう。彼女の導きであった。
彼女の次にそんなシンパシーを感じた人が師匠であろか?師匠と私はまるで人間が違う。性質がまるで違うのだ。それだけはわかる。精確無比の巨大戦艦のような方である。妥協は一切寛容しない。と思ったら突然「ま、仕方ないね」とモーゼの十戒で海が割れるがごとくスパっと一刀両断して忘れる。何かもが違う。ただ、まるで人間は違うが驚くほど理解できた。糖尿とわかる数年前、先生の作品がどことなく変わった。
「どうだい?」と先生。
「・・・・いままでと雰囲気がかわりましたね」というと、
「僕のこの作品のどこが変わったって言うんだ!マッちゃんは私が妻君のショックから未だ立ち直れていないと観念で見てるからそう見えるんだ!この作品のどこが悪いんだ!どごが萎えているんだ!僕はそんな根性なしだと思っているのか!」と烈火のごとくまくしたて、次々と作品を私につきつけた。
(そういう意味じゃないんだが・・)と思いながら、これ以上の言葉は溝を深めるだけと口をつぐんだ。自分の中でも思うところあるから烈火のように反応するのだろうと考え、しばらくは何を聞かれても「凄いですねー」とカラクリ人形のように応えていた。当然そんなことは師匠が感じないわけもなく、「具体的どこかどう凄いんだ!」と突っ込まれることもあった。
周囲から見ると、まるで親子のようだと言われることも多いが、実際野尻先生のことを私ほど理解している人はいないなーと感じることは多い。逆に野尻先生ほど私のことを把握している人はいない。これは先生の奥さんに感じたものとは違った意味で感受している。
何故に皆は先生のことを観念的にみるのか理解できないほどである。先生は聖人ではないし、わからずやでもない、頭が悪いわけでもないし、聞き分けがないわけでもない。理解して尚、選択しているのだ。先生ほど正直な人はいないだろう。しかも、その正直さが相手を傷つけると把握している言葉は言わない。常に相手のプラスになるよう発言するが、嘘は言わない。真実の欠片を掴んだ上で発言する。私は、ペラペラと口をついでしまうタイプだが、師匠ほど慎重に喋る人はいない。常に相手にプラスになるように、正直に言う。正義を行えば世界の大半を敵に回すように、結果師匠も誤解をされることが多い。それにしても不思議な関係だ。
「僕と会う予感してなかった?w」と電話で嬉しそうな先生がいた。
私は応えなかったが、実際は予感も何も会わなければいけない時期であった。担当している書道会の事務局で抽選会には落ちたのだが(我ながら驚くほどよく落ちるw)、結果的に日程を確保できたのは、ほんの先日のことである。報告もあるし、何より今年は手本を書いて頂く予定なので会う必要があった。
「今週中か遅くても来週中には会いに行かないといけないなぁ」
そう考えていたが、何かと先生も忙しそうなのでその感覚を弄んでいたところだ。先生とは不思議とそうした予感が符合する。先生はそれを子供のような感覚をもって素直に受け入れ、私はその感覚を常に意識下で検証を繰り返す。
予感は姿をかえ、形をかえつつであるが着実に結実しつつあるようだ。人心を越えた何か不思議な歯車をここ数年感じていた。こう書くとオカルト的なのだが、ある日突然隕石が振ってきて恐竜の時代が絶滅したように、けしてオカルト的なものではないと思う。人が把握できている部分なんて全体からしたら極々一部の微細なことでしかないだけなのだ。コンピューターの力を借り、少しずつ判明はしてきているようだったが、それすら部分でしかない。さて、どうなるか・・他人事のように楽しんでみたいと思う。生きているうちに楽しもう。
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2010年3月6日土曜日
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